7.千苅ダム
 神戸市北区道場町生野 どうじょうちょう Map
千苅ダムは、神戸市の一番北の果てにあります。私はこの直ぐ下流にある貯水場近辺での石橋を求めてやって来たのですが、中に入ることはできず石橋探索はあきらめました。でも、せっかくここまで来たのだから一応ダムも見ておこうと言う程度の軽い気持ちで、川沿いの細いガタガタ路を伝って上流へと向かいます。右手対岸には、たぶんダム湖の水を送水するための導水路と思われる壁面が長く続いています。その、一番北の端に2連アーチが見えますが、残念ながらRC製でした。そして、目の前に広がるのがご覧の通りの白い壁。その瞬間、走って早く近づきたいと言う心境になるから、我ながら不思議な感覚です。と言うのも、実は、大分県竹田市にある白水ダムで似たような状況に出会って以来、この手の情景が目に焼き付いていて、いつか再びと思っていたのが、全く想定外の今、突如として目の前に展開している訳です。白水ダムと比べると別格の大きさですが、壁面を流れ落ちる白い水の造形はほとんど同種のものです。これがすばらしいんです、私にとって。ただ、規模が大き過ぎるせいか、白水ダムのような、シーンとした静寂の世界に水音だけがサッサッサッサッと聞こえると言う訳には行きません。正直、音的にはさすがにちょとうるさい。でも、この白い造形は見事!!
壁面を流れ落ちる水の量が適度である場合(実はこれが一番重要な要素)、直に壁面と接している部分はどうしても壁面との摩擦抵抗により落下速度が遅くなりますが、壁面からほんの数cmも離れると摩擦抵抗はほとんど無くなり自然落下に近くなります。そうなると、水の厚みの上部の方が早く落下することになり、御覧のような下向きの矢印のような造詣が生まれます。これにより、壁面の黒い色と水の厚みの違いによる白さの強弱の文様が見事な造形を現出してしまうのです。私には、この黒を基調として白の強弱が織りなすモノトーンの造形にたまらなく魅力を感じます。おそらく、流れ落ちる水量は、これ以下でもこれ以上でもダメなんだと思います。そういう意味で、全く思いがけずですが、たまたまベストな瞬間に遭遇したと思っています。正に、ラッキィィー!!
こういう場面で、私は必ずコーヒーを飲みます。暖かいコーヒーを飲みながら、モノトーンの世界と対面する、私の至福の時が過ぎて行きます。でも、やっぱり、軍配は白水ダムの方に上ってしまいますネ。
これは、ダムに向かって右手にある放水路です。実は、この一番上にアーチが見えます。見た感じは石アーチですが、残念ながらここからは近づくことはできません。