平成22821日(土)晴れ。中部地方の神社太鼓橋の6回目の探索に出かける。今日は岐阜市の北東部、山県市・美濃市・関市が目標。関市武芸八幡宮の後、美濃市に向かう。
1.大矢田神社参道橋 おやだ 美濃市大矢田
3径間太鼓桁
岐阜市三輪神社からR94を戻り、さらにR418交差点から北へ向かい、その先ちょと複雑な交差点を右折、即左折して細道を北へ向かい、大矢田神社を目指す。こちらは武芸八幡宮参道の比では無く、大丈夫かいなと心細くなるほど延々と登って行く。そして、右手上方に華堂神社という小さな祠がある所でP。その先に幅広の階段が10段ばかしあり、その上にさらに細い階段が続いている。と、思ったらそれが太鼓橋であった。要するに、幅広階段に続いて同じ幅の谷川を跨ぐRC床板があり、その中の極一部分に太鼓桁ユニットが置かれているという状況。この太鼓橋は、ここ一月ほど見てきたどの太鼓橋とも趣が異なる。長さはそこそこあるのだが、なんせ細い。3径間であるが、桁組みはほんのお飾り程度。つまり、強度的にはほとんど不要ということか。面白いのは、橋板は全面を覆っている訳では無く、最下段が階段状になっていて、その大きな段差を一枚の板を立てることで塞いでいるのである。これは実に不思議な構造である。そもそもこの手の太鼓橋はいわゆる神橋であり、一般的には通行禁止であり、それが故に全く人が歩いて登るということを念頭に置いていない。従って、階段を設けること自体有り得ないことなのである。それなのに階段状のものがある。この点が不思議である。全体的な造りは実に緻密で、鑿の跡などどこにも見られない。全くの現代版太鼓橋である。
2.洲原神社参道添橋 美濃市須原
洲原神社はR156が洲原駅と母野駅との間で大きく折れ曲がる位置の東側にある。文字通り長良川が大きく蛇行して、その内側に堆積した土砂が洲原を形成し完全に陸地化したその場所にある。従って、短いが神社の表参道は、長良川に向かって急激に落ちて行くような配置になっている。太鼓橋はR156から入った直ぐの所にある。鳥居の向こうに苔がびっしりと生えた太鼓橋があるのだが、横に回ってみて驚いた。桁組みが全く無い。何も無いがらんどうである。エエッと思ったが、要するにこれはRC製であった。なんで、神橋をRCで造ることを許可するのか、私には全く理解できない。憤りを感じた途端、撮影対象から外れてしまった。気を取り直して内部に入り、下流側にある、ちょうど白い車がPしている桁橋を覗き込むと石桁が隠れていることが判明。仕方が無いから、これを添橋として計上しておく。
3.長良川水力発電所第一沈砂池レンガアーチ群
レンガアーチ 美濃市須原
洲原神社からR156のトンネルを北へ越えると、出て直ぐ右手が長良川水力発電所第一沈砂池である。フェンスがあって中には入れないので、狭いR156の路肩からの撮影である。水面は東西に2ヵ所に分かれており、中央部を大きなレンガ造の防水壁が仕切っている。上流側には4つのレンガアーチ、下流側にはそれぞれがさらに2つに分かれて制水壁が設けられている。中には門扉があるようだ。それを駆動すると思われる機械装置の一部が見えるのだが詳細は不明。このレンガ造設備は実にすばらしい。私はこういう構造物は大好きである。でも、悲しいかな、今日は上から伸び上がって眺めるのみ。この後さらに先へ行ってみたが頭首工は分からなかった。
4.長良川水力発電所下須原谷水路橋
レンガアーチ 美濃市須原
水路を発電所側に辿ってみる。洲原駅から細道を水路に沿って進む。直ぐに道路が小川を越える位置に来る。民家の敷地のような所を川沿いに上流へ辿ると目の前に水路壁が立ちはだかる。そこにレンガ地肌が見えているのだが、なんせ植生のものすごいこと、全体像がまるで分からない。小川が流れているので水路橋であることは間違い無いのだが、とにかく植生を掻き分け川底に降りて、腰を屈めて覗き込むとやっとレンガアーチを確認できた。かなりの扁平アーチである。上流側にも回ってみたがとてものこと降りる気にはなれない。でも、ここが下須原谷水路橋であることに間違いないと思う。中電さん、時々草刈をお願いします。
5.長良川水力発電所第二沈砂池排砂路アーチ
石アーチ(レンガアーチ) 美濃市須原
下須原谷水路橋の上から直ぐ下流側の隧道トンネルまでの間は少し水路幅が広く、ここが第二沈砂池である。要するに少し流速が落ちることで砂が落ちるのであろう。その最下流側には3基の制水工があり橋が渡されている。この制水工の脇にRC造の一画があり、下部に小さなアーチが見えている。幅は1mに満たないと思う。入口だけ石造りだが、内部はレンガアーチとなっている。奥に門扉が見えている。ここから堆積した砂を押し流して排砂するのであろう。口で言えば簡単だが、この強烈な水圧の中、構造的に・機械的にうまく機能するのかどうか心配である。また、これが何かのきっかけで壊れた時にどうなるのかと、余計なことを考えてしまう。
6.長良川水力発電所湯之洞谷水路橋
5連レンガアーチ 美濃市立花
さらに下流に辿り、尾根を越えて立花地区に入る。またまた小川沿いに遡ると、鬱蒼と茂る木々の簾の向こうに突如として巨大なレンガアーチ構造物が見え隠れする。全体像は今一はっきりしないが、これは恐ろしいほどの構造物である。心が逸るが、なんせ木々が邪魔して撮影アングルが限定されるのが何ともくやしい。目の前にある宝物を、後1cm腕の長さが足りないために届かないという感じか。チェーンソーでそこら中切り崩したいという衝動に駆られる。とにかく、少しでも全体像をとウロウロするも全て虚しい。たぶん大小併せて5連アーチと思われる。悶々としながらも時間が無いので後にする。
7.長良川水力発電所日谷水路橋
4連レンガアーチ(5連?) 美濃市立花
湯之洞谷から抜け出し、さらに下流へ。直ぐに次の川がある。ここは入口が分からない。とにかく川の上流へ行かなければならない。すると1台の軽がてっきり民家への入口と思っていた細道を登って行くではないか。間違っていたらゴメンナサイで、その後を歩いて登って行く。民家を何軒か後にすると、急に畑が広がる広場に出る。その左手奥に何となく手摺様の構造物が見えている。畑の畦道を近付くとレンガアーチが見えて来た。こちらも、状況は全く同じである。ただ、谷底に降りるのは簡単だ。まるで、湯之洞谷水路橋のコピー版を見ているようだ。あらゆる造りが全て同じである。私が確認できたのは4連である。ある資料では、5連とあるから、ひょっとして興奮の余り数え間違いしたか、あるいは埋もれて見えないのかもしれない。
ここは冬に来れば全体像が見えるのであろうか。冬枯れになって落葉してくれればあるいはかなり見えるかもしれない。私がこれまで見てきた中では、JR東海道本線の関ヶ原町にある藤古川橋梁がレンガ造構造物の中で最大であった。あの重厚さには恐ろしいほどの感動を覚えたものである。ところが、ここの2基の水路橋の雄大さはどうであろう。極めて立体的であり、重厚であり、それでいて実に意匠に富んでいて、緻密なレンガ造の極意を見せ付けられたような、強烈な印象を与えてくれる。それは、藤古川橋梁がもたらすイメージとはかなり異質なものである。何か新しいジャンルを見たような気がしてならない。何としても冬場にやって来たいものだ。
2015.08.03(月)晴・酷暑 娘と孫達を愛知まで送り届け、ついでに2泊して花火も見、月曜日に奈良へ戻ることに。午前中は娘の用事に付き合い、結局娘宅を出たのは12時前。この1週間、気違いみたいに暑い日が続いている。この暑さに耐えられるのかと若干の不安を抱きながらも、R248を多治見市へと向かう。多治見市内道路脇の気温表示は37°C。館林市や熊谷市と並ぶ日本で最も熱い市の一つである。
8.八幡神社拝殿前橋
美濃市殿町
関市から美濃市へは、何となく昔風のたたずまいで、しっとりいい感じである。美濃市役所の北の方に八幡神社がある。長い参道には何も無く、拝殿前に細溝を跨いで桁橋がある。
12.誕生八幡神社参道橋 美濃市極楽寺
太鼓桁
長良川水力発電所を後にして時刻は15時半。タイムリミットを越えている。今日は正午からの行動開始だったので、僅かしか回れなかったが欲張ると帰り道が大変なので、最後に帰りの途中と言うことで誕生八幡神社を訪ねることにする。美濃市中心部を南へ抜けR94に右折、再び長良川を西へ越えてその先NAVIに従い細道に右折。川を渡った右手が神社だが、左手に太鼓橋が見えている。やや小振りだが極太桁は見事。
9.清泰禅寺境内橋 美濃市殿町
八幡神社の東隣りに清泰禅寺がある。雰囲気は悪くないのだが今一パッとしない。それでも門を潜ったその先に3枚橋があった。
10.井ノ面発電所取水口樋門
2連レンガアーチ樋門
美濃市安毛
清泰禅寺を後にし、その直ぐ北にある住吉神社は外れ、その先で長良川を西へ越える。今日は多くの水遊び客が訪れている。R81を北上する。直ぐに井ノ面発電所がある。ここから導水路を辿る。取水口は長良川支流の板取川右岸にあった。レンガ製樋門だがゲートが半ば降りているようでアーチ部は全く見ることができない。
11.長良川水力発電所正門前橋 美濃市立花
レンガアーチ
井ノ面発電所取水口を後にして、今度はR291を長良川水力発電所に向けて遡る。前回この導水路レンガアーチを追いかけたのはちょうど5年前。なんと、くるまみち隊長によると発電所正門前のR291の橋がレンガ製だと言う。要するに、余水吐き及び非常時排水路兼用となっているようである。橋の上からは中を覗くことは全く不可能。何とか下流側左岸から降りられそうなので、それなりの準備をして降り始めると、これがいとも簡単にあっけなく到達。扁平な欠円レンガアーチが確かにあった。 径間約4.56m、内高約2.28m