2011.05.08(日)快晴。昨日朝奈良を出発し、東名阪・東名・首都高と延々乗り継いで、やっと千葉県市川市にマジェスティを持って来た。高速道路とはいえ、長旅だし、所詮250CCだし、90km/h以上は出さないように、淡々と走行車線を走り続けた。ところが東名三ケ日辺りで火災事故が発生し通行止めとのことで、全車豊川で降りることとなった。が、たまたまそこは昨夏走ったことのある場所で直ぐに記憶が蘇る。R1に出て浜名湖を越え無事に浜松ICから再び走り続けることができた。懸案の首都高速は何度も何度もWEB地図上でシミュレーションを繰り返した甲斐があって、小雨だったが間違うこと無くレインボーブリッジを越え、湾岸線を走ると市川市までは直ぐだった。
そして、今日8日はのんびりしようかとも思ったが、昨日とは打って変わって爽やかに晴れ渡り、結局いそいそと7時過ぎには出かけてしまった。行先は、千葉県の南の方。関東に於けるバイクでの初めての探索である。高速道路とは大変便利なもので、わずか1時間程で最初の目的地安房郡鋸南町の日本寺に到着した。下道ばかりを走っていたこれまでの十数万キロほどの道のりは一体何だったのだろうかと思えるほど、あっけないものだ。それに、
ETCは便利がいい。特にバイク屋にとってETCは必需品である。
1.日本寺頼朝蘇鉄東橋 安房郡鋸南町元名 あわぐん きょなんちょう
日本寺については何の事前調査もせず、いきなりの到着であったが、正直、えらい所へ来てしまったものだと若干躊躇するものを覚える。Pは既に鋸山の中腹で、そこから岩山の頂上に向けて様々な施設・建物・仏像が網の目のように石段で結ばれているという。入場料600円也は、京都でもあるまいしとも思うが、2度と来ることはないと思い、エイッと気前よく払う。案内地図を見ると目指す天台石橋ははるか高見にあるようだ。とにかく歩き出す。するともう少しで頼朝蘇鉄という直前に何やら得体のしれない橋がある。まず、関西方面ではお目にかかれない代物である。あばら骨のような筋がいくつも表面を走り、何やら不気味。でも良ーく観察するとこれが石桁橋であることが直ぐに判明。それにしても奇妙な素材ではある。その下にも桁石があるのだが、どうもこの組み合わせは理解できない。
14.不動橋 安房郡鋸南町中佐久間
石アーチ
不動橋は場所が全く分からない。中佐久間谷線が佐久間川の支流小山川と交わる所にあるという不確かな情報しか無い。地図上で中佐久間と谷と佐久間川は確認できる。現地の状況も何となく分かる。しかし、この佐久間川は曲者で、グニャグニャグニャグニャ曲がっており、うろうろしていると、行く先々で佐久間川を渡ることになる。今度こそ支流かと思いきや、またまた佐久間川。では支流小山川って一体どこにあるの??さんざん彷徨い、こうなったら全ての道路を踏破するのみと思いとにかく支流を求めてうろつく。すると、やっと支流と思われる川に遭遇。しかし、川の名前など分かるはずもなく、その二つ目の交点である橋に差し掛かる。バイクを止めて覗き込むと小さくアーチが見えるではないか。30分程もうろついたことになる。
ここは、簡単に川床に降りることができる。しかもスニーカーでも際どく歩くことができる。小ぢんまりとした端正な造りである。要石は五角形。ところが、中に入って驚いた。輪石と輪石の間に隙間があるのだ。最初はひび割れたのかなと思ったが、良く見るとそうではない。輪石の積み方がまるで成っていないのだ。要するに、通常奥行き方向の輪石はお互いの長さの半分ほどがお互いに交互に重なるように積むものである。そうすることで奥行き方向にがっしりと組むことができ、全体が一体構造になることができる。ところが、ここでは奥行き方向には全く連結が成されていない。ただ単に、
6条の輪石アーチが独立して奥行き方向に並んでいるだけである。私が初めてお目にかかる代物である。九州でこんな積み方をしては、即刻石工を首である。この場所でこういう積み方が許されたことが不思議でならない。輪石の加工そのものは実に丁寧で形も良く、これだけの技術がありながら何とも残念なことではある。しかし、明治42年とあるから現在まで約100年ほどは立派に持ち応えたことになるので、あまり現代人が知ったような顔をして声を高くする程の事ではないのかもしれない。あるいは、素材が軟らか過ぎてせん断力に耐えられないのかもしれない。いずれにしろ、貴重な橋ではある。 径間2.24m、内高2.01m、幅3.96m、環厚0.3m
2.日本寺心字池西階段橋 3.日本寺心字池西参道橋
1枚桁
頼朝蘇鉄まで来て再び案内地図を見ると、下の方に心字池があるようだ。心字池には大抵は桁橋が架かっているものだがと、とにかく階段を下りて行く。すると、きれいな階段を下りた所にまるで巨大な座布団を置いたような、一体何なんだぁ、これは!というようなものがある。表面には階段が切ってある。結局これが先ほどの橋と同じ素材の自然石一枚橋なのである。いやいやいやぁ、所変われば品変わるというが、私にとってはかなりのカルチャーショックである。それにしても変わった石である。 階段橋の前(下の方)に薄暗い心字池が広がっている。見ると、この怪しげな素材でできたコブコブの桁橋がわんさか架かっている。取り敢えず全体を良く見てからと下り始めると、きれいな石畳参道の途中に小溝を跨いで桁橋が架かっている。表面には石板が張り付けられているが、その下はあの桁石が見えている。
4.日本寺心字池南橋 3径間桁
心字池の一番南側に別格で立派な桁橋がある。橋脚の配置が不揃いで何やら良くは分からないが、一見すると4径間に見えるが、おそらくは3径間と思える。太鼓橋風だが、桁石を並べただけのものである。
5.日本寺心字池1号橋 6.日本寺心字池2号橋
1枚桁 1枚桁
南橋の入口には木戸があり何となく入ってはいけない雰囲気がある。が、誰も居ないことだし、そーっと入る。そして、池の東側の暗がりの中から西側を見渡して、南から北へ向けて順に1号・2号・・・と呼ぶことにし、合計7基を数えることができる。いずれもコブコブであばら骨が浮き出ており、実に特異な景観を演出している。ざっと見たところ、石を積み上げた大小5つの島があり、それらを一つ一つ繋いでいるのである。カジカガエルであろうか、きれいな鳴き声があちらこちらから聞こえていて、この静かな中で存在感を競っているようだ。5号橋だけが2径間であるが、その橋脚は1本柱ではなく石板を何枚も重ねたものである。こういうのは悪くない。
7.日本寺心字池3号橋 8.日本寺心字池4号橋
1枚桁 1枚桁
9.日本寺心字池5号橋 10.日本寺心字池6号橋
2径間桁 1枚桁
11.日本寺心字池7号橋
12.日本寺天台石橋
一旦P付近まで戻り、トイレを済ませ、せっかくだから大仏を撮影し、改めて上の方にある天台石橋を目指す。せっせと石段を登って行くとやっと目指す天台石橋に巡り会うことができた。立派な高欄を乗せた小ぢんまりとした太鼓橋である。親柱に刻まれていると思われる橋名は、何故か削り取られているような雰囲気がある。ちょうど周囲は高い木々が覆っており、涼しくていいのだが、木々の葉の間から洩れる木漏れ日が網の目のように広がり、撮影条件としては良くない。
日本寺の大仏・十州一覧台・百尺観音
この後、せっかくここまで来たのだからと意を決して山頂まで行ってみることにする。すると十州一覧台からはこれまでの疲れを吹き飛ばす大パノラマが広がっており、涼風が心地良い。対岸に見えているのは、東京電力横須賀火力発電所であろう。とにかくすばらしい景色が広がっている。
さらに東の百尺観音にも行ってみる。ここの雰囲気は何と言って表現したらいいのか分からないほど独特で奇怪な雰囲気を持っている。百尺観音はもちろんすばらしいが、その周囲の垂直な壁群が強烈な個性を放っている。正に、天空の別世界である。ゼイゼイハーハの汗びっしょりだが一見の価値ありと思う。
13.汐止橋 安房郡鋸南町元名
石アーチ
鋸山の展望所から南を見下ろすと、保田・元名地区を一望できる。そのどこかに汐止橋があるのだがと思いつつ下山。バイクをゆるゆる走らせながら汗で濡れた体を乾かす。汐止橋は元名川とR127の交点から200mほど上流にあるらしい。川沿いの細道を遡る。JRを潜り細道を進むとハハーンと思える場所に出た。親柱が見える。汐止の白い文字が読める。ここで間違い無いと思いつつも、鬱蒼とした木々に遮られて橋本体が全く見えない。あっちうろうろこっちうろうろして、ようやく右岸下流側急斜面を滑り落ちる。スニーカーは泥だらけになるし、靴の中にはゴミがわんさか入って来る。しかし、川床に降りて見上げるその雄姿はすばらしい。見事な橋である。見事なアーチである。しかし、やっぱり九州の橋とはかなり雰囲気が異なる。輪石は小さい。壁石は一応平行積みだが、何故か水平では無くかなり傾斜している。しかも、単重と思っていた輪石は、上部1/3程は4重になっている。何とも奇妙な構造である。さらに右岸側基礎部は半円を通り越して少し馬蹄形になっている。亀裂も走っている。いやはや、面白いものだ。残念ながら、急斜面を滑り落ちる際に巻尺を持って来るのを忘れてしまい、計測はあきらめた。某資料によると、延長13.35m、幅員4.5mとある。
2012.09.17 3連休の最後の日に再訪しました。向かって右側、左岸側護岸がきれいになっており、水面近くまで降りることができます。でも、橋の下には、やっぱり右岸側からしか降りることはできないようです。

2021.11.26 再訪
2012.09.17(月)晴れ・時々雨。3連休の最終日。未明、サーッと雨が降る音がする。予報通りである。今日は、千葉県の西南側に点在する龍と新しく発見されたアーチ石橋を訪ねてグルリと回ることにする。これも予報だが、台風16号の影響で湿った南風と上空の寒気とが混ざり合って各地で天気が不安定とか。館山から山名へ、そして再び館山に戻りへR127を北へ向かう。
極楽寺-龍 安房郡鋸南町竜島 りゅうしま

門の屋根の下に居ました。玉をもっているようです
妙本寺-龍 安房郡鋸南町吉浜

上段には羽根付き2匹、下段には親子龍。両隣りには横梁を支える力士像もあります

玉を持っています
観音寺-龍 安房郡鋸南町保田

この龍は、上下の横梁に体の一部が埋もれた形で表現されています
15.崇徳院石門 安房郡鋸南町保田
アーチ石門
R127を北上し鋸南町に入って来た。前回、汐止橋のチェックに来て以来である。汐止橋の近くに崇徳院と言うのがあり、そこに石門があると言う。この辺りは道幅が狭い。保田駅の南東から線路沿いにゆるゆると北へ向かう。中学生と思われる男の子が自転車を漕いで前を進む。それだけで、バイクと言えども簡単には追い越せない。目指す石門は、敷地の西側に延びる塀にあった。少しヨレヨレだが、輪石アーチによる立派な石門である。長崎辺りでは結構見かけるのだが、東の方になると非常に珍しいと言わざるを得ない。これで、関東では珍しいはずの輪石アーチを今日だけで3基もお目にかかることになった。
2012.11.11(日)曇り。今日は、午後から夕方にかけて関東地方に接近する低気圧の影響で雨が降り出すとのこと。その雨が降り出す前にと思い、千葉県鴨川市の龍のチェックに出かける。龍の彫り物の世界では、初代伊八と言う彫り師が最高とされているようだ。これまでにも伊八及び伊八系列の作品はいくつか見て来たが、今日は伊八そのものの作品を見ることを主目的とし、早足で回るものとする。伊八は、波の伊八、と呼ばれているように、波を彫り物で表現することに関しては右に出る者はいなく、かの有名な葛飾北斎の、富嶽三十六景・神奈川沖浪裏も元を正せば、伊八の彫り物が原点とのこと。要は、それほどの技量の持ち主である。
市井原八幡神社-龍 安房郡鋸南町市井原

龍と言うよりは大蛇に見えます

降り龍と思いますが頭部が欠けています